Blues とは
目次
Bluesは19世紀中頃、アメリカの黒人音楽を基として発展し、その音楽的特質と形式は20世紀に入っ てJazzは勿論のこと、広くポピュラー・ミュージックに影響を与えました。
Bluesの起源は彼等黒人逹の故郷であるアフリカの民族音楽に求める事が出来ます。このアフリカの 音楽と当時奴隷として連れて来られたアメリカで、彼等が聴いた西洋音楽とが、奴隷生活という特殊な境遇からくる人間的な悲しみ、苦悩、諦めといった精神的背景の下でまざりあって生まれてきたものといえます。
Bluesの基本的特徴は、その用いられるScale (Blue-note scal)と、12小節から成るchord進行(Blues chord progression)とに代表されます。
A)BIue における Scale
1)BIue-note
BluesではMajor keyに於いても melodyの第3音と第7音を半音下げたものが使用され、 また時 には第5音も半音下げて用いられる。
これらはBlue-noteと呼ばれBluesの特徴を表わす上でなくてはならない存在である。
●Blue-noteの理論的考察
本来、アフリカの民族音楽の音律ではscaleの3度、5度、7度音が西洋平均律に比較して少し低く 調律されています。正確には平均律のピッチでは表せない少しスライドした感じで音律がとられているのですが、この感じを西洋平均律で表すとするとフラットさせるのが最も近いのである。 minor chordはもとより、Major chordのBackingの上でBlue-not が使われるという事も、こうした理論的背景があります。また奴隷生活の境遇からくる哀しさ、諦め、暗さが音律的にも適合していたといえるかもしれません。
2)Blues Penta-tonic scale
先のBlue-not に主音、属音、下属音を加えた5音から成るscaleは BluesPenta-tonicと呼ばれ、伝統的なBluesに於いて旋律の基礎を形成しています。
第5音のBlue-noteはオプションとして経過的に使用されます。この場合、旋律の下行の際には#4音 と、また下行の際はb5音と表示されます。
この様に5音から成る音階は、一般に、Penta-tonic scale (5音音階)と呼ばれ、民族音楽などで幾つかの種類を見い出す事ができます。
3)BIue-note scale
Major scaleにBlue-noteを組み合わせたscaleは、Blue-note scaleと呼ばれ、Major keyのBluesにおい て広く用いられます。
●Blue-notと本来の Major scaleに含まれる音は b3 と 3 ( rootからの音程がm.3rdとM.3rd )の様に半音関係にあり、不協和な soundが生じますが、それらは同時的に使用する事ができ、上記の様な音列を形成します。 しかし、Bluesにおいて、7音がMelodyで独立的に使用されることは稀です。
4)Blue-note と minor Scale
minorkeyのBluesに於いては、b3 (m.3) の Blue-note が本来の minor scale と致する以外は、基本的にMajor keyの考え方に準じます。
Key-C minor blues(natural minor scale)
Key-C minor blues(harmonic minor scale)
Key-C minor blues(melodic minor scale)
B)BIues chord progression
1)Blues形式の発生要因
アフリカの民族音楽のひとつの特徴として Call & Response (呼びかけと応答) が行なわれる Work Song の形式がある。この時 Response を 同度 で行う場合と 4度上 で行う二通りがあり、Blues chord Progressionとしては4度上がる形式が定着していった。これらの例は奴隷時代の綿摘歌とか鉄道歌に見 られます。そして、奴隷解放の後、Bluesの発達過程で下記の様な三行詩の形式に発展し、1行目は本来のcall、2行目は1行目を強調する為のcallのくり返し部分でありながらも、Call & Responseで 用いられた 4度上がる形式 が取り入れられました。新たに3行目としてBlues独特のcadenceを用いた Responseが形成され、それが12小節l単位のBlues形式として完成されるに至りました。
2)Blues 形式
一般にBluesは次の様なTonic、Sub-dominant、Dominantの組合わせによる12小節から成るchord進行を基本としています。
譜例1)
●MajorkeyのBluesに於いて、I chord、IV chordでは Major 7th chord は Blues feeling に相反するので、 Major 6th chord か Dominant 7th chord (Blue-noteによる) が多く用いられます。
●特に IV chordに於いては、殆どDommant 7th chord が側目されます。また、2小節目の I choldが IV7 chord となる進行も多く見られます。
●伝統的なBluesに於けるCadenceの大きな特徴として、V一IV- Iという独特のChord進行が見られます。
譜例1)の基本進行に、上記をあてはめると、例えば次の様なChord進行が考えられます。
譜例2)
C)Bluesy 変化和音
Major keyのBluesにおいてBlue-noteを附加した変化和音の事は Bluesy変化和音(Bluesy Alternated chords、Bluesy 7th chords)と呼ばれます。
I7
I chordにおいて、※-1)Triad(三和音)にBlue-noteのひとつであるScale上の b7音 を付加した I7 chordがTonicとして使用される事が多いのですが、この I7 chordは、Dominant 7th chord Typeであるにもかかわらず、機能上は純然たるTonic機能と分類され、更に、もうひとつのBlue-notであるscalelその b3音 を付加して、※-2) I7(#9) が使用されることもあります。
※-1)この時、Major 6th音 を付加した chord I6 として使用されることもあります。
※-2)この#9音は、実質的記譜からはTensionの b10音、I7(b10)とも表記され得ますが、一般的なchord表記法に 従って(#9)、I7(#9)と表記されます。
IV7
IV chord においては、scale上の b3音 のBlue-noteを付加した IV7 chordとして現われる。 この時、Dominant 7th chord Typeの形で使用されるが、chord機能はSDと分類されます。
V7
V7 chordに於いては、Blue-noteであるscale上のb7音は、Dominant motionの成立を阻害する為、Chold toneとしては使用されず、Tensionすなわち ※) V7(#9)として表われます。
※) 実質的記譜からはV7(b10)と表記されるべきですが、一般的には、V7(#9)と表記されます。
bVI7
bVI7 chord は minor Key からの借用 Chord である bVI△7 chord のMajor 7th音 がBlue-notの b5音と置き換えられて出来た変化和音であり、Sub-dommant minor機能に属していると解釈されます。
minor keyに於いても当然使用出来るこの和音は、借用和音として同主長調にも多く使用されています。
D) minor -Key の Blues
minor keyのBluesにおいては、Blue-notにとnnor scaleとが一致する為、I chordはIm6またはIm7、 IV chord は IVm7、(IVm6)となりますが、V7 chordは Major keyと同様、Dominant motionを成立させる為、V7(#9)として表われます。
minor key Bluesにおける様々なVariation
minor keyにおけるBlues chold progressionは、Major keyに準じて次の様な進行を基本としていますが、 様々なVariationが考えられます。
譜例3)
譜例4)
※)ここでは IIm7(b5) – V7(b9) type の進行を行なっていますが、 Blue-not を生かした場合は、 V7 (#9) 又は V7(#9 b9) の進行も考えられます。
E) Blues chord progression の Variation
以上に述べた様な進行を基本とした上で、さらにDominant motion、Two-Five、chord pattern 等をあてはめて発展させると、この12小節のBluesには数多くのVariationが考えられます。
譜例5)
譜例6)
譜例7)